怖い話掲示板
この意味わかったら怖いらしい - なん
2016/10/26 (Wed) 17:46:18
家族を売る娘
道端で声をかけられたのは、雪のちらつく日曜日のことだった。
「家族おひとついかがですか?」
真っ赤な毛糸の帽子を被った女の子が、地面に置かれた大きな鞄を指す。
『ちょっと見てもいい?』
「ダメ。買ってくれたら、開けてもいいよ。」
『あのねぇ…家族って言うのは、パパがいて、ママがいて…「ねぇ、それっていつ、誰が決めたわけ?」
思いもよらないこたえに、私は言葉をつまらせた。
『もし売れたら君の家族いなくなっちゃうよ』
「そしたら、また新しい家族を探してくるだけよ。最近、私みたいな子が増えてるみたい。」
『君みたいな子?』
「この間も、その角で、30過ぎの主婦だったかなぁ?それで、私、声をかけられたの<おたくはいくらで売っているの?>って」
『主婦が家族を売るなんて酷いなぁ。』
「確か、洋子って言ったなぁ…」
『洋子?』
「なんか、夫の愛に植えた寂しい専業主婦って感じでさぁ…」
私はその子が話終わるのを待たずに、足早に歩き始めた。プルルルー。プルルルー。ガチャ
『あ、洋子?道端で、家族を売る女の子知ってる?家族を売る女の子。あっいや、知らないならいいんだけど…』
私はあの子のいる場所を振り返った。先程までいた彼女はまるで、地面に落ち行く雪の様に…そっとその姿を消していた。